日本サンボ連盟

2010年サンボアジア選手権
日程:2010年6月1日〜4日開催
開催地:ウズベキスタン共和国タシケント市
会場:JAR(ジャール)スポーツコンプレックス
参加国数:18カ国

上記日程で、アジア選手権が開催されました。
日本人の出場選手は、3名(昨年度は5名)。

●シニア68kg級 鈴木康裕選手(スポーツ会館)
1回戦 vs ムヒドフ・ダミル(ウズベキスタン/2008年世界2位)
腕絡み一本負け

3位決定戦 vs ボコエフ・ティメルラン(キルギス) 
0-9大差判定負け

※新興国とブロックを分ける変則トーナメントのためパキスタンがスーパーシード(いきなり決勝)、逆ブロックから3位を2名出すためにいきなり3位決定戦となる。

1位 ムヒドフ・ダミル(ウズベキスタン)
2位 アイアット・ウラフ(パキスタン)
3位 ボコエフ・ティメルラン(キルギス) 
3位 コズロフ・イーゴル(ロシア)

全日本選手権でも入賞経験がある鈴木選手が、昨年に続き参加。SKアブソリュートのプロ勢とも稽古を重ねる鈴木選手は、サンボのキャリアも15年を数えますが、いまだに実力は進化し続けるグラップラーです。減量もスムーズにいき、よいコンディションで試合に望みました。
緒戦の対戦相手は優勝候補のムヒドフ・ダミル選手(ウズベキスタン/2008年世界2位)。得意の足取りで攻撃するも、組み手を制されポイントには至らず。対するムヒドフ選手は寝技を中心に試合を組み立てる作戦で、着実にポイントを重ねていきます。
後半に入り、体勢が崩れグランドに展開になった際、カメの状態になった鈴木選手の腕を脚でとり、回転しながらの腕がらみで一本。鈴木選手は、本人の記憶するところ、国際大会で初めての関節技による一本負け。
ムヒドフ選手はその後も投げ技、寝技をうまくとりまぜ、優勝。
3位決定戦に回った鈴木選手ですが、ボコエフ・ティメルラン(キルギス)相手にポイントをとることができず、無念の大差判定負け(0−9)に終わりました。 

●シニア100kg級 千葉記位選手(SKアブソリュート)
1回戦 シード

2回戦 vs ホルカシェフ・ナビムハマット(タジキスタン/2009年世界2位)
腕十字固め一本負け

敗者復活戦
体調不良のため棄権

※この階級は新興国も3名いたので従来通りのトーナメント。

1位 ホルカシェフ・ナビムハマット(タジキスタン)
2位 セイェド・オマド・ザマニ(イラン)
3位 クリコフ・アレクサンダル(ロシア)
3位 ウトゥクラム・クトゥングフ(インド)

昨年まで90kg級で闘っていた千葉選手が、初めて100kg級にエントリー。新しい闘いを模索しているようです。
プロフェッショナルサンボを標榜するSKアブソリュート所属ながら、唯一アマチュアのサンボを主戦場にする千葉選手ですが、ベースは柔道。
前日行われた計量前の調整練習では、抜群のコンディションを見せており、日本人のアジア選手権制覇は実現目前かと思われました。
しかしながら、好事魔多し。試合前日の深夜から体調を崩し、試合出場自体が危ぶまれました。それでも、ギリギリまで回復を待ち、なんとか会場入りしマットに臨みました。
一回戦はシードで、2回戦で対戦したのは昨年世界2位のホルカシェフ・ナビムハマット選手(タジキスタン)。
序盤は有利に試合を進めるものの、体調が万全でないのは明らかでした。
1分を経過したころから、かなり動きが鈍ってきます。通常ではあり得ない状態で引き落としのアクティブを取られるなど、これまでの千葉選手らしからぬ展開になりました。最後は力尽きたのか(実際に力が入らなかったそうです)腕十字により無念の一本負け。
最悪の体調の中、試合出場した精神力は賞賛に値しますが、本人・チームを含め海外遠征での体調管理の難しさを痛感しました。
体調不良の原因は、ウズベキスタンの洗礼とも言える嘔吐下痢。ほとんどの選手が一度は経験する通過儀礼です。予防しても仕切れない部分もありますが、最善の努力が必要ということでしょう。ただ、この経験を糧として、新たな階級での活躍を期待する次第です。
奇しくも、本年の世界選手権は同地ウズベキスタンでの開催。
千葉選手には、彼の地に置いてきてしまった「忘れ物」を取り返しに来てほしいと願います。

●ユース87kg級 草野太智選手(暁星高等学校)※学校名は左記で統一します。
準決勝 vs パジロフ・ベイベット(カザフスタン)
0-0アクティブ差判定負け

1位 イワノフ・ドゥミトゥリー(ロシア)
2位 パジロフ・ベイベット(カザフスタン)
3位 ラハトゥベコフ・ベクボロット(キルギス)
3位 草野太智

大会最終日、3日目に登場した草野選手は、昨年に続いての参加。昨年はアジア選手権の後、秋には世界ユースにも出場し、確実に国際経験を積んでいます。
海外という条件にも臆さない精神的安定感を持っているため、本大会での暴れっぷりが期待されました。
気候も暖かく、もともと減量がほとんどないため、体調も良くスタミナ面の不安もなく当日を迎えました。
1回戦シードで、準決勝からの出場。相手は、身長 190cm近くはあろうかという、パジロフ・ベイベット選手(カザフスタン)。
組み手の強さが予想できたため、序盤から動き回り、スタミナを奪い勝負を仕掛ける作戦でした。
しかしながら、身長差による体力差か、うまく自分の組み手に持ち込めません。
再三体落とし等で攻め込みますが、ギリギリのところで、引き手をコントロールされ、ポイントを得る投げにはならずじまいです。
そんな展開の中、あおりのアクティブを2回とれらて劣勢のまま試合は進みます。
中盤から、相手は寝技の展開に持ち込むようになります。膝固め2回、腕十字1回、いずれも極まるわけではありませんが、対処が遅れ、数十秒間をロスしてしまいました。
結局、寝技での時間浪費がたたり、相手のスタミナを奪いきることができず、ポイントは0−0ながらアクティブ差での敗退です。
あきらかな点数差がない部分では、自信を深めたものの、「点差以上の実力差がある」と本人は冷静に分析していました。
自分なりの課題点も見つけたクレバーな選手なので、ジュニア、シニアでの活躍を期待したいと思います。

サンボ競技が普及したばかりの新興国の参加も年々増え、年ごとに規模が大きくなっている印象があります。
今大会では、その新興国にカテゴライズされているイラン勢の検討が目につきました。
柔道、クラッシュの強豪国でもあるイラン。地力のある選手が数名参加しており、強豪国であるウズベキスタン、カザフスタン勢との対戦でも、かなりの健闘をみせました。とくに、シニア中量級、重量級では、終盤逆転されてしまうものの、ポイントリードで試合を進める場面もあり、数年後にどのような成長を遂げるのかが注目です。
また、東アジアで存在感を増す韓国は、コンバットサンボ、スポーツサンボともに選手を派遣。韓国はウズベキスタンからコーチを招いているため、強化対策も本格的に始まっています。もともと格闘技を好む国民性を持つため、競技レベルが数年後には飛躍的にアップしている可能性があります。
また、例年は優勝者を多数輩出しているロシアが例年に比べ、獲得カテゴリーが減少し、その位置をウズベキスタンが多く占めていました。開催国という地の利もあるでしょうが、アジアの雄としてのポジションを、本気で取りにかかっている意志を強く感じた4日間でした。

日本選手団監督
日本サンボ連盟理事・広報担当/吉澤昌

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